こちらから連絡することは少ない。
何か喋りたいモノがたまって彼から連絡が来る、いつもそのパターンだ。
そのくせ必ず何かを求められる、引き出しに何かを入れてなきゃならない。
お気に入りの韓国ドンブリ屋、国道にあるそこは奇妙に混んでいた。
きっと給与日だからだろう、そして春休みもあるんだろう客の毛色が違っている。
家族連れというのはイマイチ雰囲気にそぐわない、
年寄りもおばさんも子どももその店には合わない。
ヤンキーのいびつなカップルが軽に乗り込むのをぼんやり見ながら、
その夜食べていたのは塩牛タン丼セットだ。
水餃子のスープももらった。
独身のね、
おっさんというか学生というか、
目に生気の宿らない人が客なんだ。
ある意味憩いの場とも呼べる。
板の前でね、スマホをじっと見続けてるのがここの客なんだよ。
コンビニでつまらない物をたくさん買って「寒い寒い」と呟きながら家に戻る。
気のせいなのか、今宵ライトが暗い。
国道の交差点にしてはどうも暗すぎる。
提案は、スタイリストをつけてみないか?
なに言ってる?
そう問うと彼はスマホを見せた。
パーソナルスタイリスト言うのがあるらしい。
曰く「パーソナルっていう個人個人に対してってのが流行ってる」
その一例としてパーソナルトレーナーを彼は口にした。
「舟木って言う…」
なるほど、そうゆう仕事が今はあるのか。
パーソナルスタイリストってのがあって、
ファッションレスキューってのを一度体験しないかって。
裏には「モテないモテない」って言うほどじゃないって思いがあるらしく、
外見をちゃんとすればある程度問題ないんじゃないかってのが本意のようだ。
人は大概一目惚れだろうってのがあるらしい。
一目見て決める、と。
たしかに、言わんとすることはわからんでもない。
しかし高いよ、数万だよ。
ちょっとね、あり得ない話だよ。
ただまぁ友達が言うには
「ファッションってのはおまえの可能性を広げてくれる」
そうゆう気がするらしいよ。
オレは顔が派手だから着る服は限られてくる、原色ばっかりだ。
その点おまえは、と彼は言う。
「顔が地味な分いろいろ出来る」
たしかにね、センスがないのよ服に限らずだけど。
ダサい格好もよくしてるしハズレた服だってよく着てる。
ときどき自分でもイヤになる。
服を買うのとか選ぶのとか面倒だって投げ出したくなる。
ちょっと意識高い系に見えるんじゃないかって言ってたよ。
まぁそんなもんになりたいとは思わへんがね、
違った世界がそこにある気は確かにするよね。
面白いといえば、
そうだね、
面白いね。