バーはね、
楽しむところであって、
楽しませてもらうってのを求めるのは違うって思う。
たぶんセックスも楽しませてもらうものじゃない、
楽しむもんだってとこは似てる。
翌土曜は夕方電車に乗って富山市へ出る。
地方なんでどこのバーも7時からしか開かない。
夕飯済ませて入ったのは猿若さんが経営する『バーみやた』、
饒舌さマックスのバーだ。
もうストーブが出てたよ、さすが早いね。
土産を渡して長いコの字カウンターの中央に座る。
その時点で彼はもうしゃべり出してる。
だからね、ジントニックにしたよ。
キングを飲んでたから
度数高くても前夜のよになりはしないだろうがね、
ちょっと腹が張ってた。
食べ過ぎた。
話はね、まずヨット、タモリカップで優勝したって。
トロフィーがボトルの間に飾れていたよ。
優勝と言っても、と彼は言う。
いろいろカテゴリーが別れてて、
勝つより楽しむことをモットーにしてるんだとか。
真剣に勝利に執着すると冷ややかな扱いがあるらしい。
次にフェアレディZ、憧れ続けようやく手に入れたらしい。
しかもオープンカー、
正直彼の見た目からじゃ結び付かないが、またそれが面白い。
若き日々から手に入れるまでの夢憧れの話、
リンゴのタルトともう一杯のジントニック。
ここはキャパがかなりあるのと、
富山の人がたいてい群れて飲みたがるの重なって時々スゴいのよ。
だから二杯だけ飲んで店を出、
駅とは反対方向の飲み屋街に足を向ける。
歩道に広がる飲んべえの群れをすり抜け入ったビルの3階、
『天使のわけまえ』、ここも富山に来たら外せないバーの一つだ。
先客がなかったんで窓辺の席に座らせてもらう。
アイラのウィスキーをと声をかければ四つ、
ラフロイグを並べてくれる。
珍しいので、
クリスマス限定のビックピート、
最近はホンマいろいろ出す。
15年のをストレートで頂いた。
これだけがたぶん飲んだことなかった。
スモーキーさは素晴らしく尖ったとこがない、スッと入ってく。
すこし話をしたのち
「これなんだかわかります?」とリキュールを出してくる。
当ててみてくださいと。
透明で無臭、口に含むと甘くなく苦くもない。
仄かな味わいはいったいなんだろうか?
果物じゃなさそうだが…。
「木です」ボトルを見せてくれる。
京都の北山杉から作ったリキュールらしい。
誰もまだ当てたことないですと。
そりゃそうだ。
木なんて思い浮かばない。
野菜かとは思ったけどね、大根とか玉ねぎとかね。
木か…発想がスゴいよな。